キッズプレート、パスタおかわり

プログラミングやデジモノについてあれこれ
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2006.04.02 13:26|カテゴリ:エッセイコメント(0)

一輪車


 私は一輪車に乗れる。嘘ではない。本当に乗れるのだ。言っておくが、土を運んだりするときに使う一輪車ではない。サーカスで使っている、つついただけで倒れそうなあの一輪車である。でも今はもう乗れないかもしれない。私が一輪車に乗っていたのは小学校のころである。
 私の小学校ではたしかベルマークをあつめていた。私は卒業するまで知らなかった。きっと極秘に計画は進行していたのだろう。しかし、うちの姉二人は知っていたらしい。いつか私がマヨネーズの袋を捨てようとするとこう言われたことがあった。
「ちょっとそれ捨てないで、とっといたんだから」
 きっとベルマークを集めようとしていたのだろうが、当時の私は、
「うちの姉達はマヨネーズの袋を集めるのが趣味なのか。こんなゴミのどこがいいのだ。私ならバーモン◯カレーの箱にするのに、あっちのほうが断然きれいだ。」
 バカな私はこう思っていた。どちらもゴミである。しかし、当時の私は姉達に対抗し本気でカレーの箱を集めようとした。
「よし、明日から集めよう甘口から順番に中辛、辛口、それが終ったらこんどは印◯カレーだ。」
 冷蔵庫を開ける。まだ未開封のカレーの箱が輝いて見える。
「明日はカレーにしてもらおう」
 私のカレー箱ライフは次の日から本当に始まった。しかし、バーモン◯カレー甘口を手にした時、
「これを集めてどうする?なにか役にたつのか?もっとよく考えろ・・・これはただのゴミだ」
 私のカレー箱ライフは一日で終った。
 さて私がこんなことをしている間にもちゃくちゃくとベルマークは集められ、集めたベルマークで学校に一輪車がやってきた。
 最初は、
「すごいすごい、一輪車だ、一輪車だ」
 と、言ってはとりあいになっていたが、ある事実に気づいた。
「乗れない・・・」
 全然乗れない。1メートルも進めない。
「なんだこれは、バランスが悪そうな乗り物だと思ったが、本当にそのとうりじゃないか。」
 と改めて確認し、歩いたほうが速いと私は認識したのである。
 そして誰もが一輪車の存在を忘れかけていた時、あるイベントによって一輪車は一躍脚光をあびることになる。
 『運動会』、そうあの赤と白に分かれて戦うという危険なイベントである。
 岡本先生が言ったのだ。
「今年の運命競争には一輪車もいれるからな」
 みんな驚愕した。誰一人一輪車に乗れないからである。きっと、
「一輪車、このままじゃ無駄だよ、何かいい案はないかね」
「それでは今年の運動会で利用する手はどうでしょう。必死で練習しますよヒッヒッヒッ」
 と、職員会議で話していたにちがいない。
「なんてこった、一輪車なんてドベ確定じゃないか、でもカードを引かなければいいのだ、強運な私は大丈夫」
 と、根拠のない自信で気にしていなかった。
 あくる日からみんな一輪車の練習を始めたが、私とボンちゃんの二人はちがった。こけるみんなを見ては、
「あぁーあ、あんなにヒザをすりむいて、まったく、みっともない」
 と、第三者を気取っていた。
 しかし、そんなある日、大人ぶった生意気な私に天罰がくだる。
 運動会にはもれなく「練習」というおまけが付いてくる。私の小学校も例外ではなく体育の時間などを利用して練習が行われた。当全、運命競争の練習もそこには取り入れられている。
 私は一輪車のカードを引かなかった。練習は何度も何度も行われたが、私は一輪車のカードを引くことはなかったのである。
「おぉ、神様さすがわかっていらっしゃる。」
 などと思いながら一輪車に乗り、こけながら必死でゴールを目指す者を見てはあざ笑っていた。さて、この練習であるが、練習にも本番がある。私達の間では「小運動会」と呼ばれていた。練習の集大成であり本番の完全なリハーサルである。実際に競技をし、得点もカウントして勝敗を決めるので、私はこの小運動会をやるたびに、
「本番をやる必要があるのか?」
 と本番の存在を疑問視していた。しかし、この私の心の声を聞いたのか運命の女神は私に試練を与える。
「まったくただのガキのくせに小運動会にいちゃもんつけるんじゃない!」
 と考えたのだろう。ついに私は小運動会で恐怖のカードを引き当ててしまった。
「一輪車にのって三角ポストを回ってゴール!!」
 若い先生が書いたのであろう。黒のマジックで躍動感溢れる一品に仕上がっている。その時の私は、
「なんてことだ、このカードは一輪車に乗れと言っているのか?フッ」
 と意味も無く鼻で笑っていた。
 ふと見ると無造作に置かれた一輪車がある。普段は遊び道具でしかない一輪車が拷問台に見えた。
 人間いやなことをしている時間は長い物で、ほんの数分の出来事が何時間にも感じられる。きっと人間には「体感時間制御装置」なるものがついているにちがいない。この装置のダイヤルを無意識に、「速い」「遅い」のどちらかに回しているのだろう。当然この時の私のダイヤルは「遅い」のほうに振り切れんばかりの勢いで変化していった。
「あぁ、これから三角ポストをまわって長い直線を進むのか、一輪車に乗って全部進めるかなぁ、きっと無理だろうなぁ、何度もこけるんだろうなぁ・・・」
 様々なことを考えているがこの間おそらく3秒とかかってはいまい。
「このくらいの思考速度で算数のテストを受けられたらなぁ・・・」
 一輪車に足をかけながらそんなことを考えた。たしかにわずかの時間にこれだけのことを考えられるなら算数のテストも「一休さん」みたいに「あせらない、あせらない」などと、たわごとを言いながらできそうだ。
「算数のテストは私にとっていやなことである。だからダイヤルは"遅い"になっているはずだが、なぜ"速い"になっているのだろう? それはなぜか?。きっとそれは"終了"の違いなんだろうなぁ。算数のテストの終了する時間は時間に乗ってやってくるけど、一輪車のゴールする時間は時間に乗って逃げていくからだ。きっとそうにちがいない」
 と、私が意味の無い悟りをひらいているとは誰も気づいてはいないだろう。なんてったって私はさっきからこけまくっている。全然進めない。ずっこけては進み、進んではこけ。「起き上がりこぼし」さながらのガッツを見せている。普通に乗っていると全然進めないので、こける時にさりげなく一輪車を前に飛ばすことを考案したが誰の目から見てもバレバレである。しかし今の追い込まれた私には選択の余地はない。恥をしのんで一輪車を豪快に前にとばす。「一輪車ぶっとばしレース」なら全国ベスト8には入りそうな勢いだ。
 ふと周りを見ると他の選手達も様々なことをしていた。マイクで歌声を披露するものもいれば、仮装をして髪を振り乱し走る人もいる。遥か前方には竹馬に乗って走る姿があった。それら全員が私の目には、いだてん野郎に見えた。
「なんで竹馬があんなに速いんだ。」
 前方の竹馬を見て恐愕する私のわきを二人三脚が風のように走りさった。
 次々と他の選手はゴールしていくが、私のゴールは遥か地平線の向こうである。とうとう最後の一人になってしまった。これがマラソンならアナウンスで、
「最後の選手が帰ってきました。みなさん暖かい拍手でむかえてください」
 などの放送が入り、他の人からも、
「くじけずによく頑張った、完走することに意味があるんだ」
 と、感動の嵐が吹き荒れるところだが実際はちがった。
「パーンッ!」
 暖かい拍手どころか銃声である。驚いて後ろを見ると次の組が一斉にスタートしているではないか。
「おいおい、ちょっと待ってくれ、やっと最後の直線なのに」
 と、あせる私に、ある先生の声が聞こえた。
「平岩っ、手で押せ」
 それなら最初から言え。そうすれば全校生徒の前でこけまくることもなく。ただ、
「平岩君は一輪車に乗れない」
 ということで終っていたのに、今の公的認識は、
「平岩君は一輪車に乗れなくて全校生徒の目の前でこけまくったあげく、手で一輪車を押してゴールした」
 になってしまうではないか。うぉー!
 さて、普通の根性のある若者なら意地でも一輪車に乗ってゴールするのだろうが、あいにく私はそんな根性を持っていない。背後には次組の軍団がせまっている。既に全校生徒の注目も次のレースの行方に向けられいるようで、私のことを気にかけている生徒は一人もいないようである。私はこれ幸いとばかりに一輪車に手をそえると疾風のようにゴールし、ドベの列にそそくさとならんだのである。
 次の日、私はある決心をした。
「一輪車に乗ろう」
 この時、全校における「一輪車にのれない生物」の生息率は20%をきっていた。運命競争の圧力で死に絶えようとしていたのだ。私の小学校で20%と言えば10人程だ。その中の一人が決心したのだ。また一歩、種の絶滅に近付いたといえる。さらに一人で練習するのが嫌だった私は同じく一輪車に乗れないボンちゃんも引き連れ練習を開始することにした。
 休み時間、職員達の思惑どおり一輪車は空前の大ブームとなり、誰もが我先にと一輪車を追い求めていた。マスコミに踊らされる原因はここにあったかと思いつつ一輪車を奪おうとしたが無理だった。もはや一輪車に乗れない奴に貸す一輪車は存在しないのである。弱った私は先生を抱き込み、
「先生、一輪車に乗れない人に一輪車優先制度を適用してくれ」
と頼んだ。世の中なんでも利用しなければ生きていけないのだ。この作戦は見事に効果を発揮し、次の日から私とボンちゃんには専用の一輪車が用意された。先生の一声は小学生には強大なのだ。 さっそく私とボンちゃんは練習を始めた。ジャングルジムにつかまりながら一輪車に乗りペダルを踏む。
「バタッ」
 1mも進まぬうちに倒れてしまった。
「ほんとに人間はこれに乗れるのか」
 私の頭に一抹の不安がよぎった。だいたい物体を一つの点だけで支えることに無理がある。この世で一本足が許されるのは、「から傘お化け」か、「やじろべぇ」ぐらいだろう。私は神からそんな許しを受けてはいない。現に私の足は二本ある。だいたいだれがこんな物を考えだしたんだ。けしからん、これがあるがゆえに私はしなくていい苦労をしているのだ。この先、一輪車に乗れるからといって人生に役立つことがあろうか? おそらくないであろう。さらに、どこかの学校では一輪車に乗れないことが原因でイジメがおこったりしているにちがいない。
「一輪車を作った人よ、あんたぁ罪人だよ」
 などと言いながら私はまたこけていた。これからしばらく毎日これを繰り返さねばならない。私はボンちゃんを見た。どうやら同じ気持らしい。
「乗れるかなぁ・・」
 さて一週間後のある日、そんな私に突然バランスの神が乗り移った。
「あれっ」
 さっきまで、
「ヅテンッ、バタンッ、ゴテッ」
 といっていた一輪車が、
「スイー、スイー、フフンー♪」
 といっているではないか。
「おぉ!なんだこれは?全然倒れないじゃないか、すごいすごい、ブラボー!」
 私は狂気した。自転車に乗れる人はわかると思うがまさに、あの感動よもう一度である。本当に突然である。どうせこけると思いながら乗ったら、あれあれあれっ、である。とうとう私にも神のお許しがでたようだ。から傘お化けの親戚にでもしてくれたのだろう。そんな私を見て負けず嫌いのボンちゃんもすぐさま乗れるようになった。
 これで運命競争はもらったも同然だ。
 大会当日、天気は上々、競技は順調に進んでいった。そして運命競争の番である。
「運命競争の選手は入場門に集まってください」
 係りのアナンスが聞こえるなか、気合いを入れて入場門に向かい、グラウンドを見た。既に前の競技は終り、入場である。私は、
「ついにこの時がきたか、たくさん苦労したなぁ。それもこれで終るのだ。今まで応援ありがとう」
 と、意味もなく誰かに感謝していた。
 10分後、競技も終盤にさしかかりついに私の出番である。ちなみに人数が少ないので、あっという間に出番がくるのだ。
 私はスタートラインについた。
「一輪車めこの間の借りを返してやる」
 悪いのは自分である。一輪車に罪はないが一輪車に乗れるようになった私にとって今の一輪車は奴隷と同じだ。私の思いどうりに動くしもべなのである。だから悪いのは一輪車なのだ。
「パーン!」
 スタートを切った私は一番にカードを引いた。
《一輪車に大人をのせてゴール》
「一輪車に大人をのせてゴール? はて一体何だろう」
 悩んでいる私のよこを一輪車に乗った選手が走っていった。
「おいおい、一輪車を持っていくなよそれは私が・・・」
 その時、私の目にある物が映った。一輪車である。一輪車といってもサーカスで使っている、つついただけで倒れそうな一輪車ではない。土を運んだりするときに使うあの一輪車である。私は絶句した。
「一週間、死に物狂いで練習したのに私はなんと運が悪いのであろう。強運なころが懐かしい。」
 強運な頃も一輪車のカードを引いてはいない。
「しょうがない誰かさがそう」
 私は父を捜した。
「お父さんこっちこっち」
 私の父は痩せている。痩せているといってもガリガリではない。ガッチリというかムキムキというかとにかく筋肉質で一見痩せて見えるのだ。当時見た目で父の体重を判断していた私はそんなに重たくないだろうとたかをくくり父を一輪車に乗せた。
「お、重い・・・」
 それはそうであろう。筋肉質で身長もこの歳では結構高めの168cm。しかもただの筋肉質ではない。
 私の父は電気工事士である。昔、電柱は木で出来ていた。それをコンクリート性の電柱に交換する時、一人で古い電柱を
「ほいさ、ほいさ」
 と、運んでいたというではないか。いくら木といっても今の電柱と同じ位の高さと太さである。ふつう「ほいさ」などと運べる代物ではないはずだ。
「くっ、重い」
私はふらふらしながら父を載せた一輪車を押した。
「ほれほれ、急げ」
 父は楽しそうだ。私の苦しみを少しわけてやりたいが、よく考えたら彼も大変恥ずかしかろう。ジャージを着て一輪車の上に載っているのだ。
 私はゴールを目指し必死で運んだ。うまく歩けないので一歩の幅は30cm程だ。小走りくらいの速さで足を動かしているから、だいたい普通に歩いているのと同じ位の速さである。そのとき少し後方のポールを回った一輪車が私のわきを通りすぎていった。
「歩くより一輪車の方が速い」
私は再認識するとまた一輪車を手で押してゴールしたのであった。

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